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日本学校ソーシャルワーク学会第2回大会IN大阪 [行ってきました(♪あんだんて♪レポート)]

7月7、8日開催  大会テーマ「スクールソーシャルワーカーの人材育成のあり方と課題」

 平成17年度から大阪府がスクールソーシャルワーカーを7小学校に導入したと聞いてから、その後どのように活動されているのか知りたいと思っていた。3年目の今年、それまでの活動実績をふまえたシンポジウム、報告、研究発表の場が大阪私学会館で開催されるというので行ってきた。1日目はあいにくスケジュールが合わず行けなかったが、2日目の分科会では参加者すべての方が真摯で熱心な空気のなか、活発な論議が交わされているのを聞くことができた。

 研究発表は午前、午後にわたり、9人の発表者だった。それぞれのテーマを見るだけでもSSW(スクールソーシャルワーク)の活動実態や動向が感じられるので紹介してみたい。
■自由研究発表
○ 臨床・実践
1、「虐待的養育環境にある子どもに対する支援―SSWの実践と研究から」
2、「多様な生徒の自立支援をめざす高等専修学校の教育実践の一考察」
○歴史・制度
3、「ジョン・デューイから見た教育と福祉のinterface」
4、「近年の教育改革の動向と特別支援教育」
○理論・方法
5、「学校ソーシャルワーク実践における間接援助技術の可能性と課題」
6、「『こどもみらい課』におけるSSW活動の実際と今後について」(福島県)
■ 課題研究発表
第1分科会「学校ソーシャルワークをめぐるチームアプローチ」
第2分科会「児童虐待におけるSSWの役割」
第3分科会「貧困から見た学校ソーシャルワーク」

 不登校と深い関係のある「いじめ問題」の背景には、虐待されている子どもがいることも多いので、虐待に関する研究発表と、そのほかに4番の研究発表に参加した。
・研究発表より
実際にSSWr(スクールソーシャルワーカー)が学校に入ってみると、支援を阻む<小学校の「学校文化」の壁>に当たる。
1つは、年度替りに教職員の異動があることと管理職の影響
2つめは、「私のクラスの私の子ども」という小学校特有の担任の意識(抱え込む)
3つめは、「気になる子ども」をめぐって、複数のチーム(「不登校」「虐待」など)が別々に会議をしている校内体制の問題
 以上の問題点から、教師間の信頼関係と早期対応が可能な体制づくりができるよう、コーディネーターになる教員がひとり必要である。コーディネーターに専念できる教員の必要性を認め、他の教員が少しずつ授業時間数を増やして、教科をもたないフリーな先生をつくった結果、学校環境が改善されたという例もある。
 コア・チーム(コーディネーター、管理職、養護教諭、SSWrなど)と担任などと組んで校内ケース会議の実施。
 ひとりの子どもの問題を不登校、発達障がい、虐待などと区別せず、「個別支援の必要な子ども」として話し合う組織(委員会もしくは部会)がひとつあるといい。問題ごとに組織があると、会議の回数が増えて、その子どもに適切な支援が遅れるということも起こる。

虐待に関していえば、通告義務が定められてからどういう状態を「虐待」と認めるか、という問題が生じてきた。担任は保護者と険悪な関係になっては、かえって子どもによくないのではという懸念がある。身体的暴力ならわかりやすいが、ネグレクト(養育放棄)だと線引きが難しいという問題もある。また、虐待がひどい時期とよくなっている時期があり、いつ通告するかの判断が下しにくいという事情もある。
 SSWの姿勢として、虐待する親に対して経済的事情や、DVなどの困難な人間関係といった諸事情を配慮しながら支援にどうつなげていくかを考えている。
 学校とその他の支援機関と連携できるようにするのもSSWの大切な仕事。
SSWが導入されることで、学校に教育的観点だけでなく福祉的な視点が加わり、個々の教師の知識や技量に任されるのではなく、特別に支援の必要な子どもに対してチームを組んで対応できる「システム」がつくられるのだという希望がもてた。
 対象の子どもがどのような環境におかれているかというアセスメント、どのような支援をしていくかを練るプランニング、どのように支援が行われその結果どうなったかというモニタリングなど、ソーシャルワークの基本的な知識や技術が学校に必要とされており、SSWrは、それを提供している。

 福祉は「自己責任」を問う場ではない。本人の責任に負わせるのではなく、こどもや大人みんながよりよく生存していくことに社会が責任を負うのである。大人たちみんなが、我が子だけでなく、すべての子どもに責任を負っていく、我が子だけ有名校に入れたらいいという意識ではなく、社会全体がみんなに対して責任を負っていく、という考え方。
 それにしても、福祉には予算がつきにくいのだなとつくづく感じ入った。これだけ画期的な働きをしているSSWrだが、ものすごい低賃金らしい。介護の仕事もそうだが、職場はあっても食べていけないから、せっかく専門的な勉強をしてきた若い世代が、やりたい仕事であるにもかかわらず、他の職に就かざるを得ないということも会場に来ていた大学の社会福祉専門の先生からうかがった。


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